子どもの発達を「~ができる」「~がある」という指標でのみ評価すると、時に保護者の方の不安をあおってしまいます。そうではなく、ある行動をとるようになるまでの、目には見えない子どもの変化や環境の働き、どのようなコミュニケーションや思考ができるのかといった観点から、子どもの発達へアプローチする必要があると考えています。
例えばことばの発達で、乳幼児が「意味のある単語」を発する前に「指さし」をするという現象を考えてみましょう。「指さし」という行動は、自分、他人がいて、さらに物があるという、いわゆる三項関係を認識するという認知の発達の段階があります。つまり、「意味のある言葉」を発するということは、外観からははっきりと確認できないような認知のステップを一つずつたどっていく必要があるのです。
子どもの発達は、その子どもの持って生まれた脳の特性と環境との複雑なプロセスであり、非常に個人差があります。それを理解しながら、保護者の方々と一緒に、一人一人の子どもの発達を丁寧にみさせていただきたいと考えています。
私は、平成9年にお茶の水女子大学大学院に入学し、心理学について学ぶ機会を得ました。博士課程前期は、「臨床心理学教室」の春日 喬先生(お茶の水女子大学名誉教授)に、後期課程は、「発達心理学教室」の内田伸子先生(筑波大学監事、お茶の水女子大学名誉教授)に指導教官になっていただきました。
私の博士論文をもとに出版した「育児不安の発生機序と対処方略」では、大学院での研究のいくつかがまとめられています。平成17年に書いたものですが、その本の「はしがき」が現在の私の仕事の出発点になっています。一部を抜粋いたしました。
~現在、多くの母親が、「適切な母親」「よりよい母親」をめざして、さまざまな努力をしています。しかし、例えば「適切な母親」という概念は、母親にとって達成すべきよりよい母親像を示しているため、母親は「よりよい母親」を目指し、その結果、そうでない部分を持つ実際の自分との分裂を深めてしまう危険性を持っています。
~母子関係や家族関係は常に変化し、流動的なものであるし、子どもの成長、発達とともに、母子間の葛藤の様相も変化します。毎日の生活の中で、子どもとの葛藤が積み重なり、否定的な感情に押し流されるとき、母親の心が闊達さを欠いた時こそ、むしろそれを家族が発達するチャンスと受け止める強さが、現代の母親に求められているのではないでしょうか。~略
「はじめまして」と赤ちゃんを迎えたその時から、育児に関する不安は枚挙に暇がないと思います。
育児の不安を解消し、親子ともに健やかな毎日を過ごして頂くためには、お悩みを一人で抱え込まないことが大切です。
些細なことでもかまいません、ぜひ当院にご相談下さい。
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